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分子制御レーザー開発研究センター(3ページ) 分子研リポート2015 | 分子科学研究所

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Academic year: 2018

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310 研究施設の現状と将来計画

8 -3  分子制御レーザー開発研究センター

8 -3 -1  経緯と現状,将来構想

分子制御レーザー開発研究センター(以後「レーザーセンター」)は,旧機器センターからの改組拡充によって平 成9年4月に設立された。以降,平成18年度までの10年間,分子位相制御レーザー開発研究部,放射光同期レーザー 開発研究部,特殊波長レーザー開発研究部の3研究部において所内課題研究及び調査研究を行う他,多数の共同利用 機器,小型貸出機器を維持管理し,利用者の便に供してきた。各研究部には助教授及び助手が各1名配置され,また セ ン タ ー 共 通 の 技 術 支 援 は 技 術 課 の 3 名 の 技 術 職 員 が 行 っ て き た。 放 射 光 同 期 レ ー ザ ー 開 発 研 究 部 は, 分 子 研 UVSOR との同期実験に向けた基礎的レーザー光学技術の開発の他,大出力紫外パルスレーザーやコヒーレントテラ

ヘルツ光源の開発などの成果を挙げた。特殊波長レーザー開発研究部は,分子科学の新たな展開を可能とする波長の 可変な特殊波長(特に赤外域)レーザーの開発の他,マイクロチップレーザー光源等の開発を行い,基礎研究として だけでなく産業界からも注目される成果を挙げてきた。分子位相制御レーザー開発研究部は,分子制御のための時間 的特性を制御したレーザーの開発と反応制御実験を目的として設置され活動を行った。

平成18年度には分子研の研究系・施設の組織改編へ向けた議論が行われたが,この中で,レーザーセンターのあり⽅ に強く関連する事柄は以下の2点であった。第一に,レーザーや放射光を重要な研究手段とし,光と物質との相互作用 に基づく分子科学を展開する研究領域として新たに光分子科学研究領域が設けられることになった。従来はこの研究領 域の研究が,主に分子構造,電子構造,極端紫外光科学の各研究系と,極端紫外光研究施設とレーザーセンターとに別々 に所属する研究グループによって行われてきた。しかし,この組織形態は,多くの共通した概念や⽅法論を基本とする 研究グループを縦割りに分断し,研究者間の情報の共有や研究活動における日常の議論を阻害する要因となっていた。 一⽅,レーザー光源を用いた研究グループは,17年度から始まった「エクストリーム・フォトニクス」のプログラムに より,既に当時,組織横断的なつながりを持つ機会が増えていた。そこで,この新研究領域を創設することにより,放射 光関連の研究グループとの間の壁も取り払い,本研究所における光分子科学研究をさらに活性化することを目指したの である。第二の点は機器センターの再設置であった。本研究所には以前,同センターが設置されていたが,その後,極 低温センターと化学試料室と共に廃止され,レーザーセンターと分子物質開発研究センターが設置され,後者は更に分 子スケールナノサイエンスセンターへと改組された。しかし,共通機器を一括して管理運営し,所内外の研究者の共同 利用を促進する必要が改めて認識され機器センターが再度設置されることとなった。これに伴って,レーザーセンターが 管理運営していた共通機器の大部分が機器センターに移管されることになった。

この措置により,レーザーセンターは従来の共同利用に関する業務を大幅に圧縮することができ,センターとして の活動の重点を開発研究に移すことが可能となった。そこで改組後のレーザーセンターでは,光分子科学研究領域の 研究グループと密接な連携をとりながら,分子研におけるレーザー関連光分子科学の開発研究の中心として機能する ことを重要なミッションと考えることとなった。ただし,光分子科学研究領域の研究グループとレーザーセンターの 役割の違いを認識しておく必要がある。光分子科学研究領域の各研究グループではそれぞれの興味のもとで光分子科 学の研究分野を開拓し,先端的研究を展開するのに対して,レーザーセンターのミッションは,光分子科学の先端的 研究とその将来的な発展に必要な,光源を含む装置,⽅法論の開発,及びそれらの技術の蓄積に重点がおかれるべき である。光分子科学研究領域とレーザーセンターのインタープレイにより生まれた技術や⽅法論を蓄積するだけでは なく,開発された手法,装置や部品を所内外に提供・共同利用に供する点で,研究領域における各グループの研究活 動との差が存在する。

ただし,技術や⽅法論の開発段階においては,各グループの研究活動とレーザーセンターの活動を明瞭に区別する

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研究施設の現状と将来計画 311 ことは,しばしば困難である。従って,レーザーセンターと研究グループの人的な相互乗り入れは不可欠であり,平 成19年度の組織再編に際しては,光分子科学研究領域及びUVSOR に属する数名の教授・准教授がレーザーセンター に併任する形で運営することとなった。このような組織で,光分子科学の新分野を切り拓くための装置,⽅法論の開 発と技術蓄積を行う開発研究施設という位置づけで,レーザーセンターを運営している。開発された装置や⽅法論の 技術的蓄積も既に始まっており,今後,所内外の分子科学者との先端的な共同研究を遂行するためのリソースとして 提供することが望まれる。

これまでの所内,特にレーザーセンター内と光分子科学研究領域内における議論,及び所外委員を含むセンター運 営委員会等の席において,レーザーセンターの機能・ミッションに関しても議論を重ねてきた。そこでの意見として, 高いポテンシャルを持つ部門間の有機的な繋がりを考え,高い視点から見た共有点や一致点(例えば光による時間・ 空間を分解する研究手法)を探ること,レーザーを使って新しい実験的⽅法論を作って行くことが必要ではないか, という議論があった。またそれに向けて,レーザーセンターを光分子科学に関わる研究者が幅広く議論を行う場とし て有効活用することが必要との意見もあった。前者はまさに数年前の組織再編時に掲げた理想に沿うものであり,そ れに向けてレーザーセンターを議論の場として有効活用して行く必要があると考えている。エクストリーム・フォト ニクスの活動としての所内セミナーの開催時に,そのような機会を持つことを,平成23年度より試行している。

平成26年度現在,レーザーセンターは以下の3つの研究部門より成り立っている。

(1) 先端レーザー開発研究部門;平等拓範准教授(専任),藤 貴夫准教授(専任),加藤政博教授(UVSOR より併任) (2) 超高速コヒーレント制御研究部門;大森賢治教授(光分子科学研究領域より併任)

(3) 極限精密光計測研究部門;岡本裕巳教授(光分子科学研究領域より併任),大島康裕教授(東工大より兼務) それぞれの部門の任務は,(1) テラヘルツから軟X線にいたる先端光源の開発;(2) 主に高出力超短パルスレーザーを 用いた量子制御法の開発;(3) 高空間分解および高エネルギー分解分光法の開発などである。レーザー光源の開発か

ら新たなスペクトロスコピー,マイクロスコピー,制御法に至る統合的な研究手法を開発することを目的としている。 これらの開発研究により,他に類を見ない装置や⽅法論を創出して分子科学研究の重要な柱として寄与し,分子科学 研究所とコミュニティの新たな共同利用の機会を開拓することが求められる。また,技術職員が積極的にこれらの研 究開発に参加することによって,新たに開発された装置や⽅法論をセンターに蓄積し,継承していくための原動力と して活躍する事が,センターのミッションに照らして重要な点である。センターが保有する光計測に関する汎用の小 型装置と技術については,一部を所内で共用することを試行している。その意味で,現在1名しか配置されていない 技術職員ポストが増員されることが強く望まれる。

一⽅,先端レーザー開発研究部門への加藤教授(UVSOR 所属)の参加は,レーザーセンターと UVSOR との連携

による新しい研究分野の創出を目指すものである。平成22年度からは実際に,レーザーセンターとUVSOR の現場 の研究者・技術職員が,レーザーと相対論的電子ビームを組み合わせたコヒーレント放射光源の開発,及びその他の 技術的課題に関して議論を重ね,実験に取りかかっている。今後,先鋭化するレーザー光源を用いた観測制御技術と 放 射 光 を 用 い た 研 究 と の 連 携 が さ ら に 進 む こ と が 期 待 さ れ, そ れ に よ り 光 分 子 科 学 の 新 た な 領 域 を 創 出 す る 正 の フィードバックも加速されるであろう。この延長線上には,将来的に,放射光とレーザーの技術を総合した大規模な 新規の研究施設を建設する構想も持っておく価値はあろう。

センターが将来に進むことを想定する構想として,上述のような放射光とレーザーを総合した大規模な光源施設を 建設することが一つの選択肢としては考えられる。しかし現在の分子科学における先端的なレーザー実験では,多く の場合,それぞれの研究目的に適した小型レーザーが用いられており,大規模な光源を共同で利用するという形態が

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312 研究施設の現状と将来計画

一般的ではない。またこれまでの分子科学研究所,また分子科学研究分野全体の光分子科学の蓄積を飛躍的に発展さ せる観点からは,レーザー光源を主に用いた高度な光分子科学研究手法を広範に追求する研究施設への展開が,一つ の重要な⽅向性として考えられる。具体的には,強度,波長などで極限的な性能を持つ光源により分子に大きな摂動 を与える研究手法ではなく,分子の機能や反応の契機となる過程をできる限りありのままの姿で捉える,低摂動で繊 細な計測手法を開拓する研究施設の構想が,所内で議論されている。分子に少なからぬ摂動を与えて得られる微小部 分を繋ぎ合わせて全体像を得るという従来の計測法を超えた,ホーリスティックで革新的なアプローチを目指す。量 子性に正面から取り組む研究手法,ノイズに埋もれた信号を繊細に取り出す計測手法,また時間や振動数領域を多変 数で,或いは高分解能かつ超広帯域に測定して分子とその集合体の物理過程の全体像を描き出す手法等を開発し,分 子の持つ高度な物質・エネルギー・情報変換能力を精緻に引き出すための研究手段を提供することを使命とする研究 センターとする。この構想に関する所内外での議論を深め,予算措置に向けた取組みを進める。研究所単位での予算 要求が難しくなっている現状のある中で,所内措置としての組織再編を視野に入れる必要もあるかもしれない。

8 -3 -2  共同研究の状況

平成27年度は,下記のような共同研究とその成果があった。

1) 「高出力レーザー新材料の基礎研究」

高輝度光発生を目的として,物質・材料の微細な秩序領域であるマイクロドメインを機能的に構造制御する手法を 探索している。特にコンポン研と(RE3+)4f 電子のスピン・軌道角運動量を利用することで配向制御,透明化を試み,

次世代高強度レーザーとして期待の高い異⽅性材料であるYb:FAP レーザーセラミックスの開発の成功を経て,最近, 世界で始めての実験に成功した。研究成果の一部は国際会議で発表し,論文としても出版された。

2) 「赤外フェムト秒パルスレーザーの開発」

赤外光である2 µm を発振波長としたフェムト秒パルスレーザーは,周波数コムを利用した気体分子の高分解能分 光など,広い分野への応用が期待されている。前年度までは,2 µm を発振波長としたフェムト秒パルスレーザー発振 器を製作した。今年度は,発振器出力を増幅することを試みた。増幅の⽅法は,Tm:YAlO3を増幅媒質とした再生増

幅器であり,これまでに106ほどの増幅に成功しており,パルス幅も500 fs 程度まで圧縮することができた。

参照

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